greeting 2025年度
広島魚市場株式会社の
経営方針について
代表取締役社長 佐々木 猛

広島魚市場株式会社のホームページにアクセスいただきありがとうございます。
米国では第2期トランプ大統領の誕生により、高関税をディールの材料に使い、ロシアやイスラエルの戦争へのトランプ流による積極関与など、世界中にトランプ旋風が吹き荒れていると言っても過言ではないと思われます。これから先の展開は全く予断を許さないものの、トランプ劇場には、将来不安と同時に今まで見えなかった未知の世界を見せてくれるような、ハラハラドキドキの期待感も感じています。
令和7年度の経営方針について
厚労省の発表によると、2024年に生まれた子どもの数は前年比5%減(外国人含む)となり、9年連続で過去最少を更新したようです。出生と死亡の差である自然減は89万人を超え、和歌山県に相当する人口減となったようです。
このような環境下においても東京一極集中は確実に進行しており、地方都市における人口減少、高齢化、その結果としての消費市場の縮小は年々深刻になっています。
その一方で最近痛感していることは、パンデミックによる生活や仕事環境の変化とほぼ時を同じくして、生成AIに代表されるIT化、DX化が急速に進展しており、中小企業においても経営環境の変化に対応し、最新技術の活用による業務の効率化等の経営革新を進めることが、生き残りのための必要不可欠な条件の一つになってきたということです。
以上申し上げたような変化に対応するため、今まで進めて来た商品開発力、加工機能の強化・高付加価値化、海外も含めた新規販路の開拓に加えて、DX化への対応による業務の効率化と高度化を、今期も全社一丸となって進めてまいりたいと考えています。
地方の水産卸会社が目指すべき方向とは
当社は昨年9月に、創業40周年を迎えました。コロナ禍の環境下においても常に半歩先を行く経営を考え、新たなチャレンジを続けています。地方の水産卸として、これから目指すべき経営姿勢の基本は、「集荷・入荷する水産物の高付加価値化を常に考え、直輸入を含めた集荷範囲の多様化、加工機能の拡充・高度化、輸出を含めた新たな販路開拓によるサプライチェーンの見える化、そして荷主との信頼関係の構築」であります。
今春には、岩国漁協様が新規事業としてスタートされる「岩国定置」が始まります。この新事業に対してどう当社として対応し、今まで培ってきた新販路、加工、輸出等といった事業ノウハウを生かして協業化が図れるか、現場対応力の試金石になると考えています。
新規事業としての牡蠣養殖の現状とこれから
江田島・深江漁協の漁業者に協力を依頼し、深江湾でのバスケット方式による牡蠣養殖事業を開始しました。近隣で牡蠣養殖に携わっておられる、元広島県栽培漁業センターの平田先生にご指導を仰ぎながら、開始後1年半余りが経過しました。本格稼働にはもう少し時間が必要ですが、今後の事業展開のための貴重な情報が様々習得できつつあります。
温暖化や最近の海の変化などを経験する中で、今後も進展が予想される環境変化に対応できる、広島県の牡蠣養殖の新たなビジネスモデルの構築を目指すという大きな目標を掲げ、日々奮闘していただいております。
今期の昇給について
令和7年度につきましても、昨年、一昨年に引き続き定昇+ベースアップを実施する予定です。人口減少、中でも若年人口の減少による人手不足は深刻化しております。最終的には人口減少により消費人口そのものが大幅に縮小し、供給する労働人口とのバランスも均衡してくると予想されます。いずれにしても昨今の物価高に対応し、社員の生活を守る観点から、ベースアップを含む昇給は不可避であると考えています。
海外人材の採用と育成によるダイバーシティ化の推進
これからの人材について、日本語(英語も含む)能力の向上に熱心な、有能でやる気のある東南アジアを中心とする海外人材の採用と育成により、会社の国際化、ダイバーシティ化を進める起爆剤にしたいと考えています。当社グループ内では既に、特定技能、実習生含め数か国からの若い人材が日々活躍してくれており、彼らなしには経営の継続が難しい現実があります。
言葉や文化の違いによる壁はあるものの、それらを我々もサポートを行いながら、やる気と能力のある人材が公平に評価される環境作りこそ、ダイバーシティ化であると考えています。
経営課題としてのデジタル化の推進について
最後に、スピードの早い企業経営を取り巻く環境変化の中で、当社が最も遅れている分野がデジタル化であると考えています。ともすればAIやSNSのような新しいデジタルツールに負の側面がニュースとなる面もあります。これらのことは発展途上の過渡的な現象の一つかもしれません。しかし、企業としてのデジタル化を推進することは、業務の効率化と見える化、役職員の意識改革、そして企業としての対外的な競争力強化の点から、避けて通れない課題であると考えています。
いまだにFAXやコピー機など、紙の資料に囲まれた昭和~平成の時代を引きずっている当社も、そろそろ本気で令和の時代にキャッチアップして行く必要に迫られていると実感し、素直に反省しているところです。
新市場における『新冷凍冷蔵庫・物流施設』及び『賑わい』計画について
今年は当市場の全棟建て替え工事が始まる年となる予定です。既存の卸・仲卸の建物は、建築コストの大幅な上昇による家賃高騰対策と、市場離れ等の経営環境の変化に対応し、ダウンサイジングにより面積をできるだけ縮小させることが賢明であると考えています。
一方で広大な敷地面積(全体で24万㎡)により生ずる余剰地を活用し、①近代的な冷凍冷蔵庫と加工機能を併設する荷捌き物流施設を、広島水産様等と共同出資による別会社として設立する計画を進めています。
また、②草津漁港に隣接する現水産棟の場所には、眼前に厳島を望む素晴らしい眺めのロケーション価値を生かした、新たな賑わい施設(私案:オイスターパーク)の建設計画を着実に進捗させる予定です。同施設に隣接して建設予定の活魚棟(近海物のセリ場を含む)を賑いの目玉として、魚市場らしさを前面に出した施設運営を構想しています。
この新しい賑わい施設は、もちろん広島市民にとって魅力あふれる潤いと非日常の空間であると同時に、海外からのインバウンド需要を含む、観光客が集客ターゲットになってきます。当社としてはこの賑わい施設が核となるような、観光事業について構想し、現状でできる範囲内において、既に新たなチャレンジをスタートさせているところです。施設の完成は計画通りでも7年後と、少し気の長い話にはなりますが、広島において地域経済活性化の一翼を担える施設となるよう、事業の進捗を率先ないし協力により、見守って行きたいと考えています。